マイコプラズマ感染症(各種検査法の特徴と結果の捉え方)

目次

平成25年末にマイコプラズマ抗原迅速診断キットが発売されてから、マイコプラズマ診断が大幅に変わりました、煩雑な抗体の解釈がいらなくなり、採血なしでも診断出来るようになりました。よって以下の資料はほとんどいらないものとなりました。

25年1月24日にマイコプラズマ感染症の講演がありましたの、いろいろ調べてもいまいちよくわからない部位がありました。マイコプラズマは近年患者数が増加しておりますが診断法が分かりずらく困っていました。講演では検査の種類、データーの読み方から、耐性菌の動向まで大変勉強になる内容でした。マイコプラズマ感染症は8割の患者が16歳以下で小児に多発する感染症ですが23年11月には昭和天皇がマイコプラズマ感染症で入院なさるなど成人にも起こります。 

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マイコプラズマ肺炎について

感染経路は、飛沫感染にようる経気道感染や、接触感染によって移ります。特に濃厚な接触が必要で保育施設・幼稚園・学校などでの感染伝播はありますが、短時間の接触ではそれほど伝染りません初発症状は発熱・全身倦怠感・頭痛などで発症から3〜5日頃より乾いた咳が徐々に強くなり解熱後も咳が3〜4週間咳が続きます。 

【ドクターからのコメント】

最初は咳がなく、熱と倦怠感、そのうち乾いた咳が出て、ずっと止まらない。

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マイコプラズマ肺炎の年別・週別発生状況

2011年は歴史的のマイコプラズマ肺炎患者が多かった年ですが2012年は更に患者数が増加しています。例年、減少する夏季休暇期間中も2012年は減少せず増加しています。1999年以降もっとも多い状態が継続しています。 

マイコプラズマ週別発生状況

 

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マイコプラズマ肺炎の年別・年齢郡別割合

14歳以下が80%を占めマイコプラズマ肺炎の中心は小児であることは例年と変わりません、若干の変動はありますが80〜90%は14歳以下です。 


マイコプラズマ肺炎 年齢別患者数2

【ドクターからのコメント】

14歳以下が80%以上で、基本的には学童と小児の病気です。

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成人の市中肺炎における原因微生物の頻度

40歳以上では肺炎球菌、インフルエンザ菌、肺炎クラミジアがトップスリーになりますが40歳以下ではマイコプラズマが肺炎球菌とほぼ同頻度になります。非定型肺炎に限れば6−7割がマイコプラズマ肺炎になります。 

成人市中肺炎の起炎菌 
⇒異型肺炎とは

「典型的な細菌性肺炎」と違って重症感が少なく、胸部X線像も異なる故に「異型肺炎」に分類されてきた肺炎群」、以下の様な特徴があります。

  • 頑固な咳
  • 胸部の聴診上所見に乏しい
  • 基礎疾患がない又は軽微である
  • 痰がない、あるいは迅速診断で原因菌が特定できない。

 

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小児の市中肺炎の原因となる病原微生物

学童期の6歳から14歳ではなんと市中肺炎の62%がマイコプラズマが原因で、その頻度は細菌性やウイルス性の8〜10倍。学童の呼吸器感染症は常にマイコプラズマを念頭に! 

 
小児市中肺炎

 

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マイコプラズマ感染症の発症機序

マイコプラズマ感染症には気道上皮細胞に作用せず脳や肝臓に血行性に移行し肝炎や髄膜炎を引き起こす肺外発症タイプと、気道上皮細胞に活性酸素による細胞障害とそれにひき続いて起こる各種サイトカインによる炎症・肺炎タイプがある。 

肺炎タイプはマイコプラズマによる活性酸素による細胞障害は弱く、その後引き続き発生するサイトカインによる強い炎症反応がマイコプラズマ肺炎の特徴(免疫の過剰反応)である。またマイコプラズマ感染後の自己免疫疾患も報告されている。

  • ギランバレー症候群
  • 突発性血小板減少性紫斑病など
スクリーンショット 2013 01 24 20 58
 

 

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ウルトラマンとマイコプラズマ肺炎のたとえ

 マイコプラズマ肺炎と免疫(ウルトラマン)のたとえ話 

  • マイコプラズマ来襲
  • ウルトラマン(免疫)出現
  • 防御反応、サイトカインの誘導、補体活性
  • マイコプラズマはあまり強くなく撃退?
  • しかしその後、引き続き各種サイトカインや抗体などで攻撃し街(肺)がボロボロになる。
  • ステロイドが出てきていいかげんにしなさいとウルトラマンをたしなめる。

 

スクリーンショット 2013 01 24 21 19 2

 

【ドクターからのコメント】

マイコプラズマ肺炎はマイコプラズマ自体の細胞障害よりも免疫細胞の過剰反応による炎症の方が大きい

 

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以下のいろいろな検査のうんちくは抗原検査キットが一般化されたため、多くは必要のない検査になりそうです。

 

 

マイコプラズマ抗原検査

平成25年度のに待望のマイコプラズマ抗原の簡易検査キットが販売され、保険でクリニックで測定できるようになりました、今までは以下の用に採血を行なって、抗体の反応をみたり、PCRを用いる煩雑な操作が必要でした。抗体の検査にいたっては採血が必要で小児患者が多いマイコプラズマでは大きな障害でした。新しく発売された咽頭拭い液を使用したマイコプラズマ抗原測定キットは、簡便でマイコプラズマの存在自体を測定するの今まで今まで広く使用されてきたイムノーカドと異なり判定結果と発症時期について悩まずにみ、採血も必要ありません。以下に書かれている長々とした様々の検査法はほとんど無用となりました。 

マイコプラズマ抗原検査のメリット
  • 採血が必要ない
  • その場で判定可能
  • 抗原と発症時期のややこしい関係に悩まずにすむ
マイコプラズマ抗原検査の精度

迅速診断に良く用いられるPCR方とPA法との比較を以下に示します、プライムチェックマイコプラズマはマイコプラズマ抗原検出キットの商品名です。 

PCRとの比較
Numbersの仮宿
PA法との比較
Numbersの仮宿

 

【ドクターからのコメント】

PCRとの一致率は92%、PA法との一致率は80%後半になります。早く百日咳の抗原検査キットがでないかな。

 

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マイコプラズマの検査(もういらないと思います)

培養同定・血清抗体検査・LAMP法(核酸検査)の3つがある  


マイコプラズマの検査方法
 
⇒培養・同定法
  1. 確実な確定診断方
  2. 薬剤感受性試験が出来る
  3. 培地が特殊で培養に1−2週間必要
  4. 早期診断に適さない(多くの場合治ってる、又は悪化している)。

マイコプラズマの治療には時間がかかり過ぎて実際の治療に使うことは皆無だと思います。

 

⇒遺伝子検査方
  1. マイコプラズマの遺伝子検査にはPCR法・LAMP法。
  2. 感度・特異度・迅速性に優れる。
  3. 検査結果はマイコプラズマの存在、感染を意味する。
  4. 咽頭スワブや喀痰を使用出来るので痛くない!←小児・学童の疾患だからとても重要!
  5. 薬剤感受性試験ができない。

LUMP法は最近、保険診療が可能となりました。

 

血清抗体検査
  1. 検査が簡単。
  2. 迅速診断が可能。
  3. 抗体の存在自体が感染を意味しない。
  4. 採血なので検査が痛い。
  5. 偽陽性・偽陰性が結構ある。
  6. 単一検査では病期によって抗体価が判読が複雑。
  7. ペア血清は確実だが時間がかかり治療には使えない。

マイコプラズマの確定診断にはペア血清とどこの教科書にも書いていますが実際にはペア血清が実施される頻度は血清抗体検査の10%以下!

 

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 病期と検査法の選択

 臨床症状・各種抗体の動き・検査方法を示したスライドです。講演中はスレイドの呈示時間が短いため気づかなかったのですが矛盾点を感じます。

マイコプラズマ感染症の特徴は長引く乾性咳嗽で3〜4週間続く、しつこい咳であって、初発症状から4〜5日目までの発熱・頭痛・全身倦怠感・咳嗽は非特異的でその他の病原菌と区別がつきません、上記の図の様に臨床症状が一週間で終息するのか?は大いに疑問です、図中のIgM抗体は二週間で消失していますが、一般的にはIgMの動き;発症後 1週目より上昇ピーク 2~6週目以後、急速に低下とあります。

マイコプラズマに特異な検査 2
 

実際は以下の様に作図するのが良いのでは?

マイコプラズマに特異的な検査 3

 

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マイコプラズマ感染症血清診断の際に知っておきたい

 マイコプラズマの検査法で一般にもっとも使われている検査法は血清抗体の測定です。しかしその結果の解釈には注意が必要。 

  1. PA(ゼラチン粒子凝集抗体価)=IgM & IgGだが主にIgM見ている;単血清320倍以上で陽性
  2. CF(補体結合反応)=IgM & IgGだが主にIgG見ている;単血清64倍以上で陽性それぞれペア血清4倍以上の上昇で陽性
  3. 迅速診断;イムノカード(IgM抗体を測定)
  • 麻疹や風疹などの感染は一般集団の中に常に存在しない。
  • 血清IgM抗体が存在する期間は回復数ヶ月間の範囲に限定、その後はIgG抗体のみの存在となる。
  • IgM抗体の検出は急性期診断としての診断意義が大きい。
  • マイコプラズマは一般集団の中に普遍的に存在する。
  • 一生の内に、繰り返し感染するのでその都度 IgM / IgG 抗体を生産している。
  • 健常人でもIgM抗体( IgG 抗体も存在)保有者が存在する。 
  • 成人ではこの IgM抗体の反応が非常に弱いかほとんどないという問題点がある。(イムノカード、PAが使えない?!)
  • 一方小児では抗体反応が強く長期に持続するため、実際の感染から長期にわたり、IgM 抗体が検出され続ける場合のある。
  • マイコプラズマ感染症の診断においては、これらのウイルス感染症におけるIgM抗体との相違点を認識することが重要。

【ドクターからのコメント】

血清抗体検査は解釈が難しいです。

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ベットサイドで使用されるマイコプラズマの検査 

イムノカード・迅速診断検査の注意点

イムノカード

  • 偽陰性の問題
  • マイコプラズマ肺炎は病像が形成されてからIgM抗体が産生されるまで3−4日かかるため、感染初期は陰性になることが多い。
  • 偽陽性の問題
  • 健常成人での陽性率は29%
  • 感染後持続陽性 30日以上 72%
  • 最長陽性期間 512日

 

マイコプラズマ迅速診断の認識

マイコプラズマIgM抗体は健常人に一定割合で保有者が存在するため、IC自体に偽陽性が多いという意味でなく、一定割合で陽性になりえる検査(特異度70%以下)であると認識すべきである。

成田光生 マイコプラズマ肺炎 診断と治療 vol98-No8 2010(105)

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PAとCF特徴と使い分け

⇒血清抗体価・診断基準
  1. PA(ゼラチン粒子凝集反応)=IgM & IgGだが主にIgMを見ている;単血清320倍以上で陽性
  2. CF(補体結合反応)=IgM & IgGだが主にIgG見ている;単血清64倍以上で陽性
  3. それぞれペア血清4倍以上の上昇で陽性

PA、CFのペア血清測定の抗体推移比較では有意上昇数、上昇率ともPAの方が高い(IgM抗体の方が動きが早い)。

PA . CFの同時依頼の抗体推移では、CFが陽転もしくは有意に上昇しているケースで、PAでは既に上昇しており変動がないケースが多い。

これはPAがCFに比べて早期に上昇する抗体であるため、急性期の診断はPAで!
 

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PA方のそれぞれの抗体価とペア血清における感度と特異度

 PAの単一血清は抗体価が80倍でも特異度が92.3%あり悪くない気がします。 

PA抗体価・感度と特異度

 

少々咳や熱がみられたからと言って、マイコプラズマが疑われるわけではないですので、病初期で採血されることはあまりなく、ある程度症状が進んでから検査されることが殆どです(←PA で良いのか?)。この場合でも、回復期に2回目の採血を行えば、抗体の上昇が確認できることが多いのですが、治った後に受診する患者さんは殆どいませんので、結局2回目の採血が行われることも殆どありません。

【ドクターからのコメント】

実際はペア血清診断は精度は高いが時間がかかり、早期の治療に使えないため、SRLではマイコプラズマの抗体検査でペア血清が実施される頻度はわずか10%、福山臨床ではほとんどないそうです。

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PAの問題点

 PAはIgM抗体の抗体価を見ています。抗体価の上がり方と下がり方には患者個人差があり、下の図からは抗体価のピークは2〜4週間で320〜5120倍、11週間後でも160倍以上の抗体価を持っている患者さんがいるため、注意が必要です。 

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期待されるマイコプラズマの新しい抗体検査

欧米ではIgM抗体とIgA、IgG抗体を測定してマイコプラズマ感染症がどの時期かを推定します。それぞれの抗体の陽性と陰性を調べて、ペア血清で無くても感染の有無以外に病期を推測することが出来ます。下の図は臨床症状は1週間で終息したり、IgMが2週間で消失、また病初期からIgGが陽性など明らかな誤植と思われる部位があります。 

スクリーンショット 2013 01 25 10 49

 

⇒おまけ(抗体検査の欠点)

  • 血清抗体検査は現在の感染を必ずしも反映しない。
  • 単一血清には信頼性に問題がある。
  • ペア血清は診断には確実だが回復期の血清が必要。

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マイコプラズマの抗原・核酸検査 

核酸検査の一種であるLAMP法は抗原を測定する検査で病初期の測定を特異とし、マイコプラズマの早期診断に有用です。 

⇒LAMP法
  • 核酸増幅検査( Nucleic Amplification Test : NAT)の一種
  • 超高感度;PCRの100〜1000倍の増幅効率→衛生上から日本国の黒ゴマひとつを増幅させて衛生で見つけることが出来るぐらい。
  • DANを検出するので精度の高い検査結果を提供できる。
  • 起炎菌の早期の同定が可能
  • 抗体と異なり検査結果がマイコプラズマの感染を反映

 

やはり臨床症状とIgMのカーブがおかしいと思いますが、本題にもどってLAMP方は核酸を増幅させて好感度にマイコプラズマを診断するキットです。 

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LAMP方はマイコプラズマの核酸を増幅しているため、陽性はマイコプラズマの存在を意味する 。迅速診断のIgM抗体よりも立ち上がりが早い。

 

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LAMPと迅速診断(イムノカード;IgM )の比較1

 LAMPと迅速診断の一致率はわずか54%!まるで囲まれた22例は感染初期を取り過ぎ、マイコプラズマのIgM抗体は存在するが既にマイコプラズマは存在せず治癒した状態と思われ(IgG抗体が立ち上がっている)、迅速診断のみではマイコプラズマ感染症と診断されます。 

迅速診断とLAMPの比較1

 

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LAMPと迅速診断(イムノカード;IgM )の比較2

まるで囲まれた1例は感染初期でマイコプラズマが感染した状態だがいまだにIgM抗体が立ち上がりがっていない、病初期です。

迅速診断とLAMP方の比較2.png

 

 

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PCR , LAMP法も万全な検査でない!!

マイコプラズマは絨毛上皮細胞に存在する下気道に感染し、そこで増殖する。つまり、上気道は本来の感染の部位ではない。 

下気道が感染の場であるマイコプラズマの上気道における菌濃度は下気道の約100〜1000分の1 程度である。 

咽頭スワブなどの検体では、採取部位や採り方での感度のばらつき、菌の存在箇所を考慮するとPCR等の高感度な方法を用いても万全ではない。 

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治療薬の選択

クラリス

  • マイコプラズマ治療の第一選択とされていたマクロライド系抗生物質
  • エリスロマイシン
  • アジスロマイシン
  • ロキシスロマイシン等

マクロライド系抗菌薬の耐性株が問題に!

 

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マクロライド耐性 M.pneumoniaeの出現と急速な増加!

マクロライド耐性菌は年々増加していますが増殖能力が低い欠陥菌の為、マクロライド耐性菌でもマクロライド系が効かないわけではなく、効きが悪いだけです。 

マイコプラズマ耐性菌png

【ドクターからのコメント】

見事にマクロライド系抗菌剤の耐性菌が増加しています。
 

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マクロライド耐性菌の特徴

  • マクロライド耐性菌;有熱期間9.3日/要予後有熱期間4.3日
  • マクロライド感受菌;有熱期間5.5日/要予後有熱期間1.4日
  • マクロライド耐性菌はいう熱機関の延長を認める(2006年、ACC)
  • キノロン系薬剤に対しても点変異による耐性化の可能性。
  • テトラサイクリン系に対しては耐性化しない。
  • 変異のためリボゾームに異常があるため、マイコプラズマ耐性菌は増殖が遅い!→欠陥菌である。
マクロライド耐性菌はMRSAのように抗生剤が効かないと言うわけではない、治りが悪い!
 

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マイコプラズマ肺炎の疫学像の変化

1991年のマクロライド系抗生剤の登場で4年周期が消え、オリンピック熱は過去のものに!新型のマクロライド系抗菌剤アジスロマイシンの登場によりマクロライド耐性菌が増加し始める。  

マクロライド耐性菌の疫学像の変化

【ドクターからのコメント】

耐性菌増加の犯人は新型マクロライド系抗生物質アジスロマイシン!

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診断・治療の流れ

 血液像と生化学検査は軽度〜中程度の炎症反応で非特異的 でマイコプラの疑い?→臨床像から「解熱後の しつこい咳と頑固な発熱のわりには、聴診器では正常な呼吸音」 

マイコプラズマ感染症の診断と治療の流れ

 

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