咽頭・喉頭痛に対するステロイド剤の投与

一般の診療をしていますと喉の風邪・喉痛の患者さんがよく来られます、そのような患者さんは早く痛みを取って欲しいため病院に来られます。頭のなかではわかっていたのですがステロイドは喉の痛みを取れるのか?ステロイドの投与によって感染症の悪化などの副作用が起こるのか?など悶々と考えていました。インターネットで検索するとBMJ. 2009; 339: b2976.2009 August 6. doi: 10.1136/bmj.b2976,Corticosteroids for pain relief in sore throat: systematic review and meta-analysisという論文が2009年、今から3年前に出ていました、しかも無料で読めましたので読んでみました。

私自身も経験しましたが、ひどい咽頭炎・喉頭炎はとてもつらいものです、ストロイドの投与で症状が改善するか?

いきなり結論

◯;ステロイドがく効く
  • 大人の症例
  • 滲出性の炎症
  • 24時間以内の除痛
  • 重症症例
  • 病原菌・陽性
×;効かない
  • 子供
  • 非滲出性
  • 軽症症例
  • 病原菌・陰性

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はじめに

外来患者の50人位1人は喉の痛みの患者で、ほとんどの喉の痛みは自然に治癒する疾患(勝手になる)でライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスによって引き起こされる。 咽頭痛の患者さんのうちグループβ-溶血性連鎖球菌は、成人の咽頭炎の約10%と子どものものの15〜30%を占めます。

溶連菌感染、伝染性単核球症、アデノウイルスは高熱と重度の咽頭・扁桃炎になり、症状が強いです。この中で溶連菌感染のみ抗生剤が効きます。伝染性単核球症の場合は肝炎や脾腫が起こり2ヶ月間は激しい運動は禁止になります。

【ドクターからのコメント】

咽頭痛の患者さんのうちで抗生物質の有効な患者さん(溶連菌による咽頭・扁桃炎)は大人で1割、子供で2〜3割。

 

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ステロイドは咽頭の炎症や痛みを引き起こすヒト気道内皮細胞における炎症性メディエーターの転写を抑制する

コルチコステロイドは咽頭の炎症や痛みの最終的に症状を引き起こすヒト気道内皮細胞における炎症性メディエーターの転写を抑制する。コルチコステロイドは、急性副鼻腔炎、クループ、および伝染性単核球症などの他の上気道感染症に有益である。コルチコステロイドの抗炎症作用が咽頭痛において同様に症状の緩和をもたらすと仮説をたて、過去に発表された論文を調べ、データーを整理して、有意差があるかないかを検定した。

【ドクターからのコメント】

ステロイドは咽頭の炎症や痛みの最終的に症状を引き起こすヒト気道内皮細胞における炎症性メディエーターの転写を抑制し、過度の免疫細胞の働きを抑制し、炎症が過度になりすぎるのを阻害する、クループ、伝染性単核球症、マイコプラズマでも過剰な免疫反応による炎症が報告されています。

 

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対象

もともとは17研究が対象でしたが条件を絞ったら8研究に減りました。 


  • 総患者数743名
  • 子供369名
  • 大人364名

滲出性咽頭炎患者を対象とした8つの臨床試験(総患者数743例,うち小児369例,成人374例)の結果を検討した。330例(44%)はA群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)陽性であった。

 

【ドクターからのコメント】

最初は17研究、3257名の患者を集めましたが条件を絞っていくと5分の1以下の743名になってしまいました。

 

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使用したステロイド

どのような種類のステロイドをどのように・どれだけ使用したのでしょうか? 

ステロイドの内訳
  • ベタメタゾン(リンデロン);2ml筋注、推定8mg(1研究)
  • デキサメタゾン(デカドロン);最大10mg (1研究)
  • プレドニン;60mg;(6研究)

プレドニン換算で50~60mgでかなり多い印象!(プレドニン5mg錠; 1錠が1日の体内分泌量と同じ量)
3つの研究で筋注、4つの研究が経口投与、1つが筋注と経口投与の併用。
6つの研究でステロイドの投与量は単一で、2つの研究で2種類以上の投与量を使用。

 

【ドクターからのコメント】

プレドニン50mg(10錠!)、外来の咽頭・扁桃炎では判っていてもなかなか使えない用量です、きっと保険の審査でカットされます。

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24または48時間後に喉の痛みに対するステロイドの影響

ステロイドを投与するよ24時間後と48時間後に喉の疼痛の完全寛解率にどれほど寄与するかを調べた、対照群は当然、鎮痛剤と抗生物質を使用しています。 


喉痛に対するステロイドの効果24−48

Fig 2 Effect of corticosteroids on number of patients experiencing complete pain relief at 24 and 48 hours. See web appendix for references

メタ解析の結果,ステロイド群はプラセボ群に比べ,24時間後(4試験で検討,以下同)における疼痛の完全寛解率が3倍以上(3.2倍, 95%信頼区間2.0〜5.1)で,48時間後の判定(3試験)でも1.7倍であった。24時間後の方が投与群よコントロールの差は大きい。24時間後に痛みが消える確率が3倍以上は十分魅力的に見えます。

 

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喉の痛みが取れるまでの時間

ストロイドの治療後、喉の痛みが取れるまでの時間に違いがあるかどかを調べた。


咽頭炎とステロイド投与

Fig 3 Effect of corticosteroids on mean time to onset of pain relief in hours. See web appendix for references

ステロイド群ではプラセボ群に比べ,疼痛軽減までの平均値が6時間以上短縮された(6試験,95%信頼区間3.4〜9.3時間,P<0.001)。

 

【ドクターからのコメント】

ストロイド投与群の方が喉の痛みが消失するまでの時間は6時間以上消失したがI2が72%とデーターのバラ付きが多かった。

 

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疼痛緩和の発症までの平均時間のサブグループの解析

サブグループは以下の内容です 

  • 大人と子供
  • 内服と筋注
  • 病原細菌陰性と陽性
  • 滲出性か非滲出性か?
  • 重症化・軽症化?

喉の痛み軽減時間短縮とサブグループの検討

Fig 4 Effect of corticosteroids on mean time to onset of pain relief analysed by subgroup using meta-regression. PO=oral delivery. IM=intramuscular delivery
Bacterial-pathogen-positiveとBacterial-pathogen-nagativeのデーターがどう見ても逆だと思います!

本文中には以下の様にあります;Similarly, we recorded a reduction in mean time to pain relief in sore throat that was bacterial pathogen positive (5.3, 8.0 to −2.6) and in trials selecting for severe sore throat (7.2, 10.1 to 4.3).

 

以下の3項目のサブグループで P<0.001、no heterogeneity (I2=0)
  • 滲出性咽頭炎・扁桃炎
  • 病原菌陽性例
  • 重症度症例

滲出性の咽頭・扁桃炎、病原菌陽性例(=溶連菌感染例)、重症症例はステロイド投与の効果がバラツキがなく科学的に有効性が認められている。

 

【ドクターからのコメント】

子供のみの症例、軽度の滲出性の咽頭・扁桃炎、病原細菌陰性群(溶連菌感染陰性群)ではストロイド投与により、改善傾向はあるが科学的には有効性は認められなかった。

 

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その他

その他おまけのデーター

  • 学童における欠席期間に両群間で有意差はなかった(3試験)。
  • 4つの研究では再発率に有意差は認められなかったが、1つの研究でブラセボ群で再発率が有意に高値であった。

 

【ドクターからのコメント】

ようするに子供の咽頭痛にステロイドは効かない!

 

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まとめ

8つの研究論文の743名について喉痛に対してステロイドは効果があるかを調べ、科学的に検討した。 


  • 使用したステロイドの量はプレドニン換算で50-60mgで結構多い量です。
  • 喉の痛みが24時間後に消失する割合はストロイド投与群の方が3.16倍多かった、48時間後では1.65倍とその差は縮まった。
  • ストロイド投与後に喉の痛みが軽減するまでの時間は(1)滲出性炎症 (2)病原菌陽性例 (3)重症者例で有意に短縮した。

 

欠点?

東札幌病院副院長・化学療法センター長 平山 泰生先生が、この論文にコメントをなさっています 

本研究はステロイドとともに抗生物質・鎮痛薬を投与した結果であるため,患者の苦痛は早期に軽減されるにせよ,医療費の増大および耐性菌の誘導という懸念がある。したがって,私としては実地医療として咽頭炎患者にステロイド投与を勧めることはしない。また,ステロイド投与はB型肝炎キャリアの劇症化を招く可能性がある。咽頭炎に限った話ではないが,B型肝炎表面抗原(HBsAg)を測定していない患者に安易にステロイドを投与してはいけない。

mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr090806.html(←医師限定サイトです、申し訳ありません)

 

【ドクターからのコメント】

耐性菌は抗生剤投与の問題ですのでストロイド投与とは別次元では?肝炎患者でなければ、成人の重症・滲出性咽頭扁桃炎に対するステロイド投与は選択肢の1つではないでしょうか?ひどい咽頭・扁桃炎は本当につらいものです。もっとも実際のところプレドニン60mgを外来で処方するのはアレなので、セレスタミン6錠(プレドニン換算で15mg含有)と抗生剤の投与が無難?でしょうか。

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