腎性高血圧

 

二次性高血圧(腎性)と腎動脈エコー

先日、北九州市立八幡病院の循環器科 原田 敬先生による講演を拝聴させて頂きました、忘れないように整理してみました。  


高血圧患者の患者数 4

 

高血圧患者は4000万人あり、治療を受けている患者数はその内の4分の1の1000万人と言われ、さらに血圧コントロールが良好なのはその半分の500万にと言われています。すなわち高血圧患者のうち良好な治療を受けているのはたった8分の1に過ぎません。

 

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二次性高血圧症

 高血圧患者の約9割は生活習慣などが原因の一次性高血圧ですが明らかな原因がある二次性高血圧が約1割存在すると言われています。 

  二次性高血圧症の特徴として

 

  1. 重症又は難治性高血圧 最近の急激な血圧の上昇
  2. 思春期以降に発症した高血圧
  3. 非肥満で明らかな家族歴がない30歳以前の発症
  4. 電解質や腎機能障害がある高血圧

 

▶  二次性高血圧症との原因

 

 頻度順に並べると以下のようになります 

  1. 腎実質性高血圧(慢性腎臓病)
  2. 腎血管性高血圧(腎動脈狭窄症)
  3. 原発性アルドステロン症(高血圧患者の5%アルドステロン症らしいとのこと)
  4. クッシング症候群
  5. 褐色細胞腫
  6. 甲状腺機能障害
  7. 副甲状腺機能亢進症

 

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鑑別診断の為の検査

  一次性高血圧と二次性高血圧を鑑別するためにいくつかの検査が必要になります。  

▶  採血

 

  1. 検尿(必修・基本)
  2. 血清クレアチニン値(必修・基本)
  3. 腎血管エコー(腎実質性・腎血管性高血圧の発見・鑑別)
  4. 血漿レニン活性
  5. 血清アルドステロン値
  6. 腹部エコー(クッシング症候群・アルドステロン症)

 

▶  その他、多いのが薬剤性高血圧です、原因となる薬剤として以下の薬剤があります。

 

  1. 消炎鎮痛剤(ボルタレン・ロキソニン);長期連用時・腎障害患者・高齢者
  2. 甘草(グリチルリチン);多くの漢方薬に配合されています 。
  3. ステロイド エストロゲン;経口避妊薬・更年期障害
  4. エフェドリン
  5. 抗鬱剤;三環系抗うつ薬・MOA阻害薬

【ドクターからのコメント】

1の消炎鎮痛剤による高血圧は日常的に痛み止めを飲んでいる方は注意が必要です。

  

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2次性高血圧の第一の原因

▶  慢性腎不全(CKD)とは 

 

(1)腎臓の障害(蛋白尿)など

(2)GFR<60以下

(1)又は(2)が3ヶ月以上持続する疾患群であり原因は問わない

  

【ドクターからのコメント】

CKDの定義は腎臓内科が制作したものでなく循環器内科が制作したもので、その目的は「原因を問わず腎機能低下は血管病の危険因子である」からだそうです。

  

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GFRの低下が腎死より、心血管疾患による死亡率を上げます 。

腎機能が進むと透析になり、腎疾患による死亡が多いとの印象がありましたが実際は腎死より心血管疾患(CVD)による死亡がはるかに多く、腎障害による血管内皮機能低下が動脈硬化を加速させ、心血管イベントの増加をもたらしている。 

 

GFR別の生命予後
 
(注)CVD;心血管疾患
89-60;stage Ⅰ
59-30;stage Ⅱ
29-15;stageⅢ
腎臓は予備能力が多くあり本来の能力の10%(GFR10mL/min)あれば尿を作ることができます、それ以上腎不全が進行すると、尿を生成することが出来ず透析が必要になります。

 

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蛋白尿を放置すると末期の腎不全になります

 腎機能評価には蛋白尿とeGFRで行います蛋白尿に関しては言い訳無用で腎機能障害を示し、「蛋白尿の程度=障害された糸球体の割合」を意味し、一昔まで言われた体質による蛋白尿は言い訳になりません。 

末期腎不全発症率と蛋白尿 2013 02 13 18 14  

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eGFRよりも蛋白尿の方が死亡率に影響を与えます

蛋白尿を放置すると末期の腎不全になります もう一方の指標のeGFRは機能しているネフロン(糸球体と尿細管)の割合を示しています、(例)eGFR 45%は機能しているネフロンが45%である事を意味します。  

EGFR 蛋白尿と死亡率の関係 2

 

eGFRと蛋白尿を比較すると蛋白尿の方がより死亡率に関係してきます、eGFR>60で比較すると蛋白尿(ー)と2+以上では死亡率が2.7倍も高くなります。 eGFRよりも蛋白尿の方が大切!蛋白尿を改善出来れば死亡率は下がります。 

 

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CKDの治療(ものすごく要約すると)

(1)降圧療法では生活習慣の改善と減塩が重要。

(2)降圧剤はACEまたはARB(原田先生はニューロタン/ロサルタンがお気に入りでした)。

(3)ACE, ARB使用時は血清クレアチニン値の上昇や高Kに注意(腎動脈狭窄が隠れている場合がある)

 

【ドクターからのコメント】

(3)は診察でも時折経験します、じわじわとクレアチニンが上昇してきます。

  

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慢性腎臓病の降圧剤に何故、ARB・ACEなのか?

高血圧が続くと糸球体の中の細かい動脈の血圧も上がります、蛋白尿が出るという病態は糸球体血圧が正常の50mmHgより高くなっている状態であり、ACE/ARBは輸出細動脈を広げることにより糸球体血圧を下げ、糸球体の血管内皮保護作用、すなわち腎保護作用を発揮します。 


 

糸球体とACEの関係
糖尿病腎症・発症・進展機序と治療、槇野博史、診断と治療社、P20,P80-84,1999より作図 。

 

 【ドクターからのコメント】

腎動脈狭窄性高血圧の場合は腎動脈の狭窄により糸球体の血流が減少、糸球体血圧が低下している状態です、その状態でACE/ARBを使用すると既に低くなっている糸球体血圧がさらに下がります。

 

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ここからが本題

今回の講演会、前フリが長たったですが実はここからがメインになります、腎動脈狭窄(RAS)による高血圧です。感覚的に腎動脈狭窄(RAS)はかなり稀な疾患のイメージがありましたが原田先生によれば決して珍しい疾患ではない様です 。 

▶  腎動脈狭窄症の有病率

 

 

腎動脈狭窄性の有病率 2 
  • 高血圧全体の1-6%
  • 難治性高血圧26-47%
  • 高齢者心不全30%
  • 頸動脈狭窄剖検例27%
  • 透析患者11−41%

 

【ドクターからのコメント】

原発性アルドステロン症と腎動脈狭窄だけで二次性高血圧の一割は超えているそうです。

 

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日本循環器学会ガイドラインによる腎動脈狭窄(RAS)の疑い所見 (=腎血管エコー検査の対象患者)

  • 30歳以下、又は55歳以上で発症する高血圧
  • 突然増悪する難治性や悪性高血圧
  • ACE , ARB投与後の腎機能悪化
  • 原因不明の腎萎縮または左右腎の差が1.5cm以上
  • 突然発症の肺浮腫
  • 原因不明の腎不全
  • 冠動脈多枝病変
  • 原因不明のうっ血性心不全
  • 難治性狭心症

 

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腎動脈狭窄症による高血圧の病態

腎動脈狭窄・腎不機能が悪化すると、ますます高血圧⇒腎機能悪化⇒高血圧の悪循環が始まります。 


腎動脈狭窄の病態

 

 

▶  病態は以下の順序で悪化していきます

 

⇓ 無症候性 

⇓ 腎血管性高血圧

⇓ 虚血性腎症

⇓ 心血管合併症への進展(うっ血性心不全・脳卒中・続発性アルドステロン症)

 

【ドクターからのコメント】

基本病態はNaの貯留、腎機能が悪化するとますます血圧が上がり悪循環が始まります。

 

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腎動脈狭窄症(RAS)のスクリーニング方法として

▶  腎動脈狭窄症のスクリーニングには以下のような検査法があります。 
  • 腎エコー
  • CTアンギオ
  • MRIアンギオ
  • 血管造影(DSA)
この中で腎エコーが非侵襲的で狭窄診断だけでなく腎実質の機能診断もできてとても有用です(但し術者の経験と技が必要・・・・・)

 

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腎動脈エコーの基本

▶  エコーの観察ポイント

  1. 左右の腎臓の大きさ
  2. 大きさが1.5cm以上で小さい方の腎臓に動脈狭窄の可能性
  3. 腎動脈血流測定
  4. PSVが185cm/secで60%以上の狭窄の可能性が高い
  5. 腎内動脈の血流測定(RI>0.8は腎実質の障害が高度)

【ドクターからのコメント】

腎内動脈の脈波測定は簡単ですが腎動脈の描出が難しく修行が必要です。

▶  まずは機械の設定

エコー設定はとても大切です、また当然プローベも重要なファクターです、当院ではセクター型のプローベはなく3.5MHzのコンベックス型を使用します。

腎動脈エコー設定

 

▶  プローベの位置と方向

原田先生は斜め後方・肋間からセクター型プローベでの検査を推奨していました。

腎動脈エコー

 

▶  理想的エコー像

腎動脈エコー 2
上手に腎動脈を描出できると上記の様な絵になります、実際のデモでも上の様な綺麗な絵にはなりませんでした。

 

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腎動脈血流の測定

腎動脈や腎内動脈の波形を測定することにより狭窄度や腎予後の予測が出来ます。 


腎動脈血流の測定

 

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Resistance Indexによる腎予後の予測

腎内動脈のResistance indexは血管抵抗の目安になります。 


Resistance Indexによる腎予後の予測

 Renal resistance index and progression of renal disease Radermacher et  al ; Hypertension 2002 Feb; 39 (2 Pt 2 ); 699-703

RIは多くのエコー検査機で自動的に算出可能です、RIは脈は波形パターンの谷の割合、血管抵抗の目安です。RIが高いと血管抵抗が大きく、腎実質障害が大きいことを意味する。同じCcr50%以上でもRIが0.8以下と以上では透析投入率と死亡率に大きな違いが存在する。

 

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まとめ

  1. 腎動脈エコーは「腎実質障害の程度」と「腎動脈狭窄の有無」を無侵襲に評価できる。
  2. 腎実質障害の程度は腎内の血流波形から得られるResistance Index (RI)を用いて判断する。
  3. RIはCKDの評価、PTRA( 経皮的腎動脈形成術)の適応決定等に有用な指数である。
  4. 腎動脈狭窄の有無は腎動脈血流速度(PSV)によって測定することで判断する。

【ドクターからのコメント】

 腎動脈狭窄症は稀な疾患ではなく、そのスクリーニングには腎動脈エコーがとても有用です、しかし腎動脈エコーはかなりの慣れと経験が必要で、侵襲はありませんが気軽に簡単という検査ではありません。

 

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