このページは星の原クリニック 院長 林俊(医学博士)が記載したものです。

形成外科と皮膚科の違い
粉瘤の手術は、形成外科および一部の皮膚科で行われています。以下に、形成外科医が得意とする手術の特徴を示します。
- 高度な切開技術や縫合技術を用いて傷跡を目立たなくする工夫を行う。
- 瘢痕が目立ちにくい部位や自然なラインを考慮して切開を行う。
- 専門の手術器具や電気メス、止血機材を用います。
- 手術の熟練度が皮膚科医師と異なります。
ポイント: 形成外科では美容的な観点も重視した手術アプローチが特徴です。

粉瘤とは
粉瘤は皮膚の下に老廃物が溜まる良性の腫瘍です。多くの場合、しこりの中心部に黒色の開口部があり、悪臭を伴う粥状の物質を排出します。治療では被膜を完全に取り除くことが重要で、被膜が残ると再発の原因となります。

重要: 完治には被膜の完全除去が必須です。被膜が残ると再発の可能性が高くなります。

粉瘤の様々な呼び方
粉瘤には、同じ病気を指す複数の呼び方があります。
粉瘤(ふんりゅう)
一般的に最もよく使われる呼び方
アテローム
医学用語、粉瘤の正式名称
表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)
アテロームと同じ意味
類表皮嚢腫(るいひょうひのうしゅ)
アテロームとほぼ同じ意味だが、厳密には少し異なる病態

粉瘤が出来る原因
粉瘤は、毛穴に古い角質や皮脂が詰まることや、皮下に毛包の組織が落ち込むことで発生します。以下のような原因が考えられます。
原因不明・体質
多くの患者さんでは特定の原因が特定できません。体質的な要素が大きいと考えられています。
遺伝的要因 (外毛根鞘囊腫)
頭にできる粉瘤の【外毛根鞘性嚢腫】は遺伝性があると言われています。
外傷性・ピアス痕
【外傷・怪我の痕】【塞がったピアス】【腹腔鏡の傷跡】が原因で粉瘤になることがあります。
ウイルス性 (足底部)
足底部にできる場合、ウイルス感染により汗腺組織が嚢腫をつくったものと考えられています。
誤解を解く 粉瘤は【袋状に垢・汗等の老廃物】が貯まる病気であり、不潔にしていることが原因と思われがちですが、全く関係ありません。

粉瘤の症状
粉瘤は、初期段階では自覚症状がない場合が多いですが、徐々に大きくなると以下のような症状が現れることがあります。
皮膚にドーム状の盛り上がり
粉瘤が皮膚の浅い部分の場合は、基本的にはドーム状に盛り上がります。時間とともに少しずつ大きくなります。
しこり
粉瘤の場所が深い場合は、見た目では盛り上がりがはっきりせず、触った場合にのみ【しこり】として認めます。
中央に黒い点(開口部)
粉瘤は多くの場合、しこりの中央に黒い開口部あることが多く、ときどき【しこり】の開口部から粉瘤の内容物が出てきてます。
悪臭を伴う分泌物
開口部がある場合、悪臭と垢様の粉瘤の内容物の漏出し、服を汚す場合があります。
炎症・痛み
細菌感染やアレルギー反応が起こると急激に腫れがひどくなり、痛みが出現します。

当院の粉瘤・脂肪腫等患者統計
開院から2024年11月までの13年間で、約3,500例の治療実績があります。以下のデータは、令和元年10月から令和6年10月までの5年間における1,959例の集計結果です。
性別差
性別では若干男性が多い傾向です
- 男性:1,038名(52.99%)
- 女性:921名(47.01%)
- 合計:1,959名

年齢別の患者数
加齢ともに徐々に増加し、40歳代ピークになり、その後年齢とともに減少して行きます。
- 40代:510名(26.03%)
- 30代:379名(19.35%)
- 50代:385名(19.65%)
- 20代:259名(13.22%)
- 60代:194名(9.90%)
- 70代:107名(5.46%)
- 10代:102名(5.21%)
- 80代:23名(1.17%)
居住地域別統計
クリニックの所在地の早良区からの患者さんが一番多く、4番目の10%はやや遠方の福岡市外からの患者さんです。1.3%は遠方の県外からの患者さんでした。
- 早良区:770名(39.31%)
- 西区:287名(14.65%)
- 城南区:275名(14.04%)
- 市外:196名(10.01%)
- 中央区:143名(7.30%)
- 南区:127名(6.48%)
- 博多区:84名(4.29%)
- 東区:51名(2.60%)
- 県外:26名(1.33%)
予約枠が一杯の場合でも診察は可能です、直接ご来院いただくか、お電話でのご確認をお願いします。

粉瘤手術の術前検査について
超音波検査
安全かつ正確な手術を行うため、手術前に超音波検査を実施しています。

上のエコー写真は一見典型的な粉瘤でしたが、エコー検査を実施したところ、【雪だるま様】の粉瘤でした、エコー検査で前もって深い部位にも粉瘤があることがわかっていたので、1回の手術で取りきりました。
採血
腫瘍が大きい、重度の基礎疾患がなど以下の方は術前に採血が必要となります

- 腫瘍の大きさが5cm以上の方
- 糖尿病がある方
- 中程度以上の肝臓の病気がある方

粉瘤の手術方法について
当院では、傷跡が目立ちにくい「くり抜き法」を得意としています。以下に、一般的な「切開法」と「くり抜き法」、「小切開法」の違いについてご案内いたします。
一般的な切開法 ▽

くり抜き法 ▽

小切開法 ▽


くり抜き法・小切開法で
治療できないケース
当院では、できる限り小さな傷での治療を目指していますが、以下の場合には「くり抜き法」や「小切開法」での施術が難しいことがあります。

- 赤く腫れている病変
- 患部の場所が深い
- 小さい切開から出せない硬い病巣
- 腫瘍と周囲の癒着が強い場合
- 血が止まりにくい方
- 心臓・肝臓・脳に重度の病気がある方

粉瘤手術の症例の写真
粉瘤・脂肪腫・くり抜き手術の多くの治療前後の写真があります、ご参考にしてください。
背中の脂肪腫(70mm)



右小鼻の粉瘤の症例



女子小学生の大腿外側の粉瘤 ▽

背中の15mm大の粉瘤



背中の40mm大の粉瘤



背中の20mm大の粉瘤
背中の2cm大の粉瘤です。4mmのトレパンを使用しました。

鼻の下の20mm大の粉瘤
鼻の下の2cmの粉瘤です、傷が目立つ部位ですので頑張って小さな傷(2mm)で摘出しました。


粉瘤手術の料金(3割負担)
- 部位と大きさによって施術料金が異なります
- 粉瘤の被膜に皮膚癌が稀に発生します、経過の長い粉瘤は【病理検査】を実施いたします
- 病理検査;3割負担で3,000円
露出部(3割負担時) | 施術料金(税込) |
---|---|
〜2cm | ¥4,980 |
2〜4cm | ¥11,010 |
4cm〜 | ¥13,080 |
非露出部(3割負担時) | 施術料金(税込) |
---|---|
〜3cm | ¥3,840 |
3〜6cm | ¥9,690 |
6〜12cm | ¥12,480 |
12cm〜 | ¥24,960 |
予約枠が一杯の場合でも診察は可能です、直接ご来院いただくか、お電話でのご確認をお願いします。

粉瘤の様々な病態と呼び方
部位や炎症の状態で名前が変わります
表皮囊腫・類表皮囊腫
粉瘤の正確な医学名称。表面に黒い点や開口部が見られることが多い。臭いを伴うことが多い。
外毛根鞘囊腫
頭部にできる粉瘤。悪性化の頻度がやや高く、遺伝性があることがある。
炎症性粉瘤
細菌感染を起こし、痛み・赤みを伴う。切開して膿・被膜・内容物を摘出するのが確実。くり抜き法は不可。
慢性肉芽腫の状態
慢性炎症で、大きくなったり小さくなったりを繰り返す。ゼリー状の物質が溜まる。くり抜き法では完治できず、大きめの切開が必要。

粉瘤と類似している病気
脂肪腫
粉瘤に次に日常的に良く見かける皮下腫瘍です、穴がない粉瘤とは区別がつかない場合が多くのですが、エコー検査をすれば一目瞭然です。【脂肪層】【筋層内】【骨膜下】など様々な深さで発生します、自然に消失する事はほぼありません、大きくなると傷跡が大きくなるので早めの外科的な治療をお勧めします。
石灰化上皮腫(毛母腫)
石灰化上皮腫(毛母腫)も日常的によく遭遇する皮下腫瘍です、小児に発症することが多く、また触った感じが石の様に硬いです、粉瘤の様に被膜がなく、筋層内や皮下脂肪に入り込んでいることが珍しくなく、粉瘤に比べて再発しやすいです、またくり抜き法では摘出できません。
血管脂肪腫
全身に多発する皮下腫瘍です、ほとんどの場合皮膚の色調に変化はありません、薄い膜に包まれた嚢胞で、内容物はコーンポタージュの様の液状の脂肪です、多発するのが特徴で、数が少ない場合はエコーでは粉瘤と区別がつきません、治療は外科的摘出になります。→詳しくは血管脂肪腫のページへ
化膿性汗腺炎
繰り返し炎症と膿瘍を起こす疾患です、臀部(おしり)・腋窩(わき)、鼠径部、乳房下などアポクリン汗腺の多い部位に発症します、炎症性の粉瘤とは初期の段階では見分けがつきません、化膿性汗腺炎は注意深く手術しても再発します、重症度が高い場合は、アダリムマブ(ヒュミラ®)の皮下注射を行います。有棘細胞癌が〜4.6%発症すると報告されていますので注意が必要です。
毛巣洞(毛巣瘻)
尻の割れ目(臀裂部)の皮膚の下にできる慢性の炎症性疾患で、体毛が皮膚に刺さり込み、毛穴から内部に入り込むことで異物反応が起こり、炎症や膿瘍(膿がたまった袋)を形成します。長時間の座位、肥満、多毛などがリスク要因とされています、膿がたまったりトンネルができたりする病気で、根本治療には手術が必要になることが多い
耳瘻孔
耳たぶ付近にできる病気で、病態は粉瘤ににていて、皮膚の下に垢や皮脂が溜まります、出生時より小さな穴があるのが特徴です。
皮膚線維腺腫
粉瘤と同様に【しこり】となる病気ですが、粉瘤が皮下の病気であるのに対して【皮膚線維腺腫】は皮膚にできる病気で皮膚ごと切除する必要があり、粉瘤のように【くり抜き法】による手術が出来ません。
外傷性・術後瘢痕
怪我や手術の後にできる【しこり】です、体質や病変部の場所に影響されます。粉瘤の再発と区別が難しい場合があり、エコー検査を行います。

粉瘤はがんになるのか?
稀に粉瘤の被膜から癌(有棘細胞癌)が発生することがあります(0.011~0.045%)。原因は不明ですが、炎症性粉瘤が悪性化した報告があります。
悪性化の特徴
- 平均年齢61.8歳、男性に多い(69%)
- 頭か首に多い(54.8%)
- 平均の大きさ: 5.0cm
- 平均発症期間: 92.6ヶ月
主な症状
- 疼痛(24.2%)
- 急速な拡大(48.6%)
- 皮膚の変化(38.2%)
- 抗生物質治療に失敗(25%)
これらの特徴は炎症性粉瘤でも見られるため過度な心配は不要ですが、悪性変性が疑われる場合や特定の症状がある場合は【病理検査】を実施します。

粉瘤手術までの流れ
①ご予約 ▽
手術は原則予約制となっております。 初診の方のWEB診察予約を承っております。まずはご予約をお願い致します、当日に手術室に空きがある時は診察当日に手術可能です。②診察 ▽
医師が患部を診察(視診・触診)します、【しこり】 が粉瘤・脂肪種・その他なのか判断致します。③検査 ▽
【しこり】がどの程度の深さ・大きさ・形なのか超音波検査を行います、また【しこり】の大きさが5cm以上の時は採血が必要となります。④ご予約(後日施術) ▽
当日の空きがある場合は診察後に当日の施術が可能となりますが、空いていない場合は後日、手術のご予約をお取りいただいております。⑤手術 ▽
腫瘍の大きさによりますが、おおよそ15~45分程度、大きいものですと60分程度の手術となります。⑥術後の再診 ▽
術後の血腫や感染症の有無の確認と抜糸のため、手術日以外に1〜3回の受診が必要です。⑦抜糸 ▽
しこりの大きさ、場所、感染の有無により、7〜14日後に抜糸が必要です。

粉瘤・皮下腫瘍診察のご予約
【診察のWEB予約】が可能です、【メニュー】から《30分》粉瘤等の皮下腫瘍の【診察】をお選びください。なお手術の予約は診察後になります、ご了承ください。(当日に手術室に空きがある場合、当日に手術可能になる場合がございます)
予約枠が一杯の場合でも診察は可能です、直接ご来院いただくか、お電話でのご確認をお願いします。

粉瘤など皮下腫瘍のQ & A
粉瘤は自然に治りますか?
粉瘤は極稀に自然に消えることもありますが、ほとんどの場合、再発したり、大きくなったりすることがあります。 気になる場合は、医療機関を受診しましょう。
粉瘤を自分で潰しても良いですか?
粉瘤を自分で潰すと、炎症や感染のリスクが高まります。 また、傷跡が残る可能性もあります。
粉瘤は遺伝しますか?
一部の粉瘤は遺伝する可能性もありますが、必ずしも遺伝するわけではありません。 家族に粉瘤の人がいる場合は、粉瘤ができやすい体質である可能性があります。
粉瘤とニキビの違いは何ですか?
粉瘤とニキビは、どちらも皮膚にできる腫瘍ですが、原因や構造が異なります。粉瘤は、表皮細胞が皮膚の内部に入り込んで増殖したり、毛穴がつまって出来る病気です。 ニキビは、皮脂がつまり盛り上がったり炎症を起こしますが皮下で増殖することはありません。
くり抜き法とはどのような手術方法ですか?
くり抜き法は、2〜4mmの小さな穴を開けて粉瘤や脂肪腫の内容物を排出し、被膜を摘出する方法です。従来の切開法に比べて傷が小さくなるのが特徴です。
くり抜き法で全ての粉瘤・脂肪腫を治療できますか?
全てのケースでくり抜き法が適用できるわけではありません。皮膚の厚い部位や大きな腫瘍の場合は小切開法など他の方法が適している場合があります。事前の診察で適切な治療法を判断します。
当日すぐに手術できますか?
当日に枠があればその場で手術が可能ですが、空きが無い場合は後日手術のご予約をお取りいただいております。
手術時間はどれくらいかかりますか?
手術時間は大きさや炎症の有無によって異なります、小さい粉瘤は15~30分程度、大きい粉瘤や炎症のあるものでは30〜60分です。
手術は痛いですか?
事前に局所麻酔を行いますが、痛みの感じ方には個人差があります、ほとんどの場合手術中は痛みを感じません。
くりぬき法での手術を希望します
手術後の経過はどうなりますか?
手術後7〜14日程度で抜糸が必要です。また術後の血腫や感染症の確認のため、1〜2回の受診が必要となることがあります。
手術前の検査は必要ですか?
安全な手術のため、超音波検査を実施します。また腫瘍が5cm以上の場合や糖尿病などの基礎疾患がある方は術前に採血検査が必要となります。
星の原クリニックで治療できない場合はありますか?
陰部・肛門周囲の病変や、重度の基礎疾患がある場合など、当院での治療をお断りすることがあります。その場合は他の医療機関をご紹介します。

粉瘤手術・治療を動画で解説
くり抜き法について
粉瘤のくり抜き法
脂肪腫の小切開法
当院での実際の小切開方による脂肪腫の施術動画をご覧ください。(腫瘍の性状によっては小切開方では実施できない場合があります)
予約枠が一杯の場合でも診察は可能です、直接ご来院いただくか、お電話でのご確認をお願いします。
