陥没乳頭でお悩みの方へ
このページでは、陥没乳頭について、原因や症状、治療法、当院での治療の特徴、よくある質問などをわかりやすく解説しています。
以下の内容は院長の林が執筆しています「文責:星の原クリニック院長 医学博士 林 俊」
陥没乳頭とは
陥没乳頭とは、乳頭が外側に突出せず、乳輪の中に埋もれてしまっている状態を指します。本来、乳頭は外側に突出しており、授乳の際に赤ちゃんが吸い付きやすくなっています。しかし、陥没乳頭の場合、乳頭が埋もれているため、授乳に苦労される方もいらっしゃいます。また、見た目の問題から、コンプレックスを抱えている方も少なくありません。 陥没乳頭は、10~20%程度の割合でみられる比較的よくある症状です。 必ずしも健康上の問題があるわけではありませんが、 授乳や衛生面で気になる場合は、治療を検討することもできます。
陥没乳頭の頻度
陥没乳頭は先天性と後天性があり、合計すると10〜20%の頻度で起こると言われています。
先天性陥没乳頭の頻度
生まれながら陥没乳頭の方を先天陥没乳頭と言います、多くは思春期までに事前に治りますが、18歳以上で重度の感冒性は授乳障害が問題となるため、治療が必要となります、以下の特徴があります。
- 先天性の陥没乳頭の頻度は10%です
- 両側が陥没乳頭の方は87%です
- 遺伝性、家族性は50%あります
- 思春期までに多くは自然に治るので、治療が必要な方はもっと少なくなります。
- 18歳で陥没乳頭が残るようであれば治療を考えましょう
後天性陥没乳頭の頻度
先天性でなく、思春期以降の後天的に起こる陥没乳頭は残りの5〜10%程あり、この場合は乳癌や皮膚癌などが関係する場合があり、総合病院での精密検査が必要になります、若い女性で発生することはほとんどありません。
- 乳癌
- Paget病
- 加齢による乳房のタルミ
- 体重減少
- 外傷性の脂肪壊死
- 急性乳房炎
陥没乳頭の症状
陥没乳頭の症状は、乳頭が埋もれている、乳頭が引っ込みやすい、刺激しても乳頭が突出しないなどがあります。 また、陥没乳頭は、衛生面で問題が生じやすく、分泌物が溜まりやすいため、炎症を起こしやすくなることがあります。 さらに、乳管が拡張して詰まってしまう「乳管拡張症」を併発するケースもあります。乳管拡張症になると、乳頭とその周辺が赤くなったり、痛みを感じたり、白、緑、または黒色の分泌物が出たりすることがあります
- 乳首が引っ込むので授乳が上手にできません。
- 乳頭部に細菌がたまり非衛生的です。
- 審美的な問題もあります
陥没乳頭の原因
陥没乳頭の原因には大きく分けて先天性と後天性の2つがあり、その下で更に細かく分類されます。
先天性陥没乳頭の原因
思春期以前はまだ乳房・乳管が発達していないので乳頭は平らかやや陥没していても問題ありません、18歳以上になっても陥没乳頭がひどい場合ご相談ください、以下の3つが考えられます、多くは①②乳管や乳頭直下の組織の未発達が原因です
- 乳管が発達が悪く短い
- 乳頭の直下の結合組織が少ない
- 乳頭の線維化が強い
後天性の陥没乳頭の原因
先天性でなく、多くは30〜40歳以降に起こる陥没乳頭は残りの5〜10%程あり、この場合は乳癌や皮膚癌などが関係する場合があり、総合病院での精密検査が必要になります、若い方で起こることはほとんどありません。
- 乳癌
- Paget病
- 加齢による乳房のタルミ
- 体重減少
- 外傷性の脂肪壊死
- 急性乳房炎
陥没乳頭のグレードと病態
指で引っ張り出せる軽度の陥没乳頭は市販の吸引器などで改善できます。
大きな分類
- 刺激や指などで引っ張ると引き出せるのを仮性陥没乳頭と言います
- 引っ張り出せないのを真性陥没乳頭と言います。
細かい分類
グレード1
乳首は手動で簡単に引き抜くことが可能で、乳頭の突出の状態を維持も良好です、線維化はほとんどありません、市販の乳頭を引き出す機材で対応できます、手術は必要ないと思います。
グレード2
乳首は手動で引き出すことは可能ですが、【グレードI】ほど簡単でははありません。引っ張るのをやめると、元にもどってしまいます。中程度の線維化と軽度の乳管の短縮があります。
グレード3
乳首はひどく引っ込んけいます、引ぱっても乳頭は出てきません。乳頭の線維化はひどく、柔らかい軟部組織もあまりありません、乳管は重度に短縮しています、手術による治療が必要です。
陥没乳頭の治療
吸引器具
乳頭に吸引器具を装着し、陰圧をかけることで乳頭を突出させる方法です。手軽に試せる方法ですが、効果が一時的な場合があり、継続して使用することが必要なケースもあります。
ホフマン法
ホフマン法は、母乳育児を支援する際に用いられる方法で、両手の親指を乳頭の両脇に置き、押し下げながら親指を引き離すことで、乳頭を突出させる方法です。
ニップルシールド
ニップルシールドは、薄いシリコン製のカバーで、赤ちゃんが乳頭を吸い付きやすくするものです。 陥没乳頭によって授乳が難しい場合に役立ちます。
手術療法
当院では難治性のグレード3の陥没乳頭に対して、乳管を傷つけない難波変法を実施しています。
乳管を温存した術式を行っています
当院では乳管を切らない、難波変法での乳頭形成術を行います 乳頭にZ状の切開を3箇所加えます、出来上がりの切開線は乳輪のシワや乳頭の段差に隠れてほとんど分からなくなります。
- 乳管を切らないので授乳に影響がない。
- 傷が目立たない。
- 手術時間が短い。
- 術後の感染症が少ない。
乳頭の手術の合併症について
全ての手術にはリスクが伴います、頻度は多くありませんが陥没乳頭の手術にも合併症がおこる可能性があります、極めて稀ですが【乳頭壊死】は重大な合併症で注意が必要です。
- 陥没乳頭の再発;3割前後の確率で発生します。
- 創部感染症;頻度は多くありません、稀に数カ月後に発生することもあります。
- 乳頭壊死;血流不全によって発生します、私自身経験はございませんが、重大な合併症です。
乳頭壊死について
乳頭壊死は重大な合併症です、当院ではまだ経験がありませんが、以下のような対策を行っています。
- 手術中の丁寧な操作と止血
- 術後に安静後に、血流の問題のないのを確認後のご帰宅
- 翌日再診での乳頭部の血流の確認
- 乳頭の壊死を予防するためのステロイドの内服
- 微小循環を改善する漢方薬の内服
陥没乳頭・手術のながれ
当日
- 腫れ抑制・痛み止めの薬を術前30分に内服
- 手術室にご案内;消毒
- 局所麻酔(前もって麻酔クリームを塗ることも可能です)
- 手術時間(片側約40分)
- 30〜60分間院内で安静、出血や乳頭の血流を確認
- 御帰宅
翌日〜
- 消毒、術後経過観察:出血の有無や皮膚の血流の状態の確認をします
3日目
- 創部のホルダーは装着したまま、シャワーが可能となります。創部をやさしく洗い流して軟膏を塗ります。
7日目
- 再診:傷の状態を確認します、細菌感染の有無、皮膚壊死の有無を確認します。
14日目
- 抜糸
- 陥没乳頭の程度が酷い場合は術後に乳頭を牽引する糸を2週間留置する事があります。
- ブラジャー圧迫による再発防止のため、乳頭保護ホルダーを2ヶ月間装着して頂きます。
- 小さなキズが乳輪内にできますが数ヶ月で目立たなくなります。
陥没乳頭のQ&A
福岡市では健康保険の審査が極めて厳しく、健康保険の治療には様々の条件がございます、授乳歴があり、40歳未満で、今後授乳を希望される場合は、健康保険が適用となる場合があります。 それ以外の場合は、自費診療となります。詳しくは、当院までお問い合わせください。
はい、手術で陥没乳頭を治すことができます。ただし、陥没の程度や原因によっては、手術の効果が limited な場合もあります。
陥没乳頭の治療は局所麻酔を使用するため、手術中に痛みを感じることはほとんどありません。術後に多少の違和感や軽い痛みを感じる場合がありますが、これは一時的なもので、痛み止めの処方もありますのでご安心ください
手術によって乳頭の突出は改善されますが、完全に正常な形になるとは限りません。
手術後にすぐに日常生活に復帰することが可能です。ただし、傷の回復や感染症予防のために、数日間は激しい運動や温浴を避けることをお勧めします。
難波変法による施術は、傷が乳輪のしわや乳頭の段差に隠れるため、時間と共に目立たなくなります。また、傷跡は個人の皮膚の再生力により異なりますが、多くの方は数ヶ月でほとんど気にならない状態になります。
当院では乳管を切らない術式を採用しているため、乳頭壊死などの重大な合併症を起こさない限り(当院では発生したことはありません)、授乳機能に影響はありません。安心して治療を受けていただけます。
術後は医師の指示に従い、出血や感染症の予防のために適切なアフターケアを行ってください。特に、術後3日目以降にシャワーが可能となりますが、医師の指示に従ってください。また、2ヶ月間は乳頭保護ホルダーの着用をお勧めします。
当院のWEBサイトからカウンセリングの予約が可能です。お気軽にご利用ください。質問や相談がございましたら、当院のスタッフが親身に対応いたします。
陥没乳頭の外科的治療は20%程度は再発します、自由診療の場合は1年以内の再発は半額での保証制度がございます。
重度の陥没乳頭は外科的治療でも難しいことがあります、当院では自由診療の治療で3ヶ月以内の再発・効果がない場合は全額返金の保証制度がございます。
施術料金(自由診療)
福岡市では保険の審査が大変厳しく、現在はの陥没乳頭の手術は治療は基本的に自由診療となっています。
- 片側の場合は154,000円(税込)
- 両側の場合は275,000円(税込)になります。
施術料金(保険診療)
授乳歴があり、出産可能年齢で、両側の重度の陥没乳頭の方のみ保険診療が可能となります。
- 片側の場合:22,050円
- 両側の場合:44,100円