外用薬、漢方薬、紫外線治療、ヒスタグロビンを組み合わせてアトピー性皮膚炎を治療いたします。
はじめに
以下の内容は院長の林が執筆しています「文責:星の原クリニック院長 医学博士 林 俊」
星の原クリニックでは以下の内容を組み合わせてアトピー性皮膚炎の治療を行っています。
- 外用ステロイ軟膏
- 紫外線治療(J-TRAC・V-TRAC)
- 抗ヒスタミン剤(内服・外用)
- 漢方薬
- ヒスタグロビン注射
- 生活指導
アトピー皮膚炎治療のコツ
なかなか治らないアトピー性皮膚炎の治療にはいくつかの治療のコツがあります。以下の10項目が特に大切です。
- 定期的にしっかりと通院しましょう。
- ステロイド軟膏は適切な量をしっかり塗りましょう。
- 症状が酷いときは強いステロイド軟膏を短期集中使用します。
- 症状が改善すれば順次弱いステロイド軟膏を使用しましょう。
- 夏場はこまめに汗を拭きましょう。
- 冬場は保湿が特に大切になります。
- 風呂はぬるま湯で、強い石鹸やシャンプーはやめましょう。
- 漢方薬は著効することがあります、ぜひ試してみてください。
- 症状がひどい部位は紫外線かエキシマライト治療をします。
- ヒスタグロビン注射が著効することがあります。
アトピーの悪循環を断つ
乾燥と炎症を抑えることにより、アトピーの悪循環を止めてます、手っ取り早い確実な方法は適切なステロイド軟膏外用としっかりした保湿になります。
保湿とスキンケア
保湿は基本中の基本です、しっかりと塗りましょう。
- 症状が酷い時は石鹸を使わないで!
- 保湿は徹底的に!
- 汗は速やかに濡れタオル等で拭き取りましょう!
入浴の注意点
皮膚症状が酷い時の入浴は石鹸は原則禁止、あとは温水できれいに洗い流すのみとします。入浴時間も短めにし体温上昇を防ぎます、これだけで皮膚症状は改善します。
- 症状が酷い時は石鹸やシャンプーは使わない。
- 熱いお湯は避ける。ぬるま湯が望ましい。
- 刺激を感じさせる入浴剤は使わない。
- 入浴後は、できるだけ早く保湿する。
外用ステロイド軟膏の使い方
外用ステロイド軟膏はアトピー性皮膚炎のはじめの一歩です、正しく塗りましょう。初診の方は看護師から塗り方の実演をさせて頂きます。
外用薬の使用量の目安・FTU(Finger-tip unit)
Finger-Tip Unit(FTU)とは、外用薬5mm口径の中部を人差し指の先端から次の関節まで押し出した量で0.5gに相当します。1FTUの手のひら2枚の広さに塗ります、それ以上伸ばすと薬の効果が落ちます。星の原クリニックでよく処方する混合軟膏は50mlで100FTUになります。
FTUと塗布部位1
塗布部位と必要なFTU(軟膏の使用量)のイラストです。
ステロイドの外用薬の使い方
強いステロイドの使用は2週間を目安に
皮膚が真っ赤でガサガサ腫れて浸出液が出ている状態は火事に例えれば大きな炎が上がった火事の状態です、そのような状態ではバケツの水(弱いステロイド)では鎮火で来ません、強いステロイド(消防車)で短期集中に使用して消化します。火の勢いが無くなってからバケツの水で(弱いステロイド)で鎮火します。
- 症状が強い時は強いステロイドを短期集中で
- 紫外線治療も併用
- 強いステロイドは2週間以内に限定
- 体を冷やす漢方薬も使用します
外用ステロイドの副作用
外用剤は、皮膚から体内に2~2.5%しか吸収されず、数日間で排出されます、正しく使用すれば体内に蓄積され全身的な副作用を起こすことはまずありません。
- 皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)
- 毛細血管拡張(いわゆる“赤ら顔”)
- 色素沈着
- ニキビ、多毛など(外用薬では滅多にない)
- 皮膚の易感染性(あまりない)
- 副腎皮質機能の抑制
外用ステロイドの安全使用の目安
軟膏のチューブは5gか10gになります、5gは10FTUに相当します。範囲が広い場合は5gでは伸びないので混合軟膏をしようします。
プロトピック軟膏(タクロリムス)
腎皮質ステロイドとは全く異なる機序でTリンパ球を抑制します。顔面や首などに使用します。ステロイドが効かなかった皮疹に効いたり、皮膚の毛細血管拡張などの副作用が無いなどの利点がありますが。使用初期に灼熱感があったり、紫外線予防が必要、顔と首以外は吸収率があまり良くないなどの欠点もあります。
- 乾燥、赤み、かゆみのみられる顔面・頸部に使用します。
- 1日1~2回塗ります。
- ジュクジュクした皮膚には使いません。
- かゆみや、ヒリヒリとした刺激感がみられることがありますが、数日で改善します。
- どうしても我慢できないときは、最初は1日1回(夜)塗るだけ
- 日光で刺激が強まる時は、夜1回塗って下さい。
- 赤み、かゆみが良くり、さらに皮膚をつまんで軟らかくなるくらいまで使用します。
- 週~月単位で使用してかまいません。
- 良くなった後はさらに2ヶ月くらい週1~2回使用すれば再発防止になります。
- 皮膚炎再発したらプロトピックを使用します。→再発時の第1選択剤です
注射薬
非特異的免疫療法のヒスタグロビンの治療を行っています、重度のアレルギー体質の方、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎の方にお勧めです。
エキシマライト治療(VTRAC)
VTRACはエキシマランプを使用して、紫外線の副作用が少なく、治療効果が高い特定の波長308±2 nmを照射できます、エキシマランプにより病変部のリンパ球の働きを速やかに抑えて炎症を沈めます。
- エキシマライトは紫外線治療器の一種類になります。
- エキシマライトは皮膚に浸潤したリンパ球の働きを抑え皮膚の赤み・痒みをとります。
UVB紫外線治療機(J-TRAC)
広範囲が照射可能な紫外線治療機です、患部が広い場合はこの機械を使用します
内服薬
単独で使用するとはあまりありません、外用薬のみでコントロールがよくない時に使用します。アトピー性皮膚炎で使用出来る内服薬の種類は実はかなり選択肢が少ないのがわかります。
- 抗ヒスタミン剤:最近は眠気が少なく、切れの良い製品があります。
- IPD:ヘルパーT細胞のTh1とTh2のバランスを整える作用があります。
- 免疫用製剤:副作用の問題もあるため当院では取り扱っていません。
漢方薬(アトピー性皮膚炎)
アトピー性皮膚炎に対する一般的な内服薬の選択肢が少ないのに対して漢方薬は多くの種類がございます、急性期と寛解期の薬に別れます、相性が合えば抜群に症状が改善致します。
急性期の漢方薬
痒み・発赤が強い時に使用する漢方薬です、皮膚の炎症を抑えるためにいずぜれも体を冷やす成分が入っています。炎症でも乾燥しているか?浮腫みがあるか?熱感が有無などで処方致します、良く使用するものには以下の物があります。
白虎加人参湯
発赤と乾燥の強い急性期のアトピー性皮膚炎に使用します。
- 赤く、カサカサしたアトピーに使用します。
- 黄連解熱等とならぶ代表的な漢方の消炎解熱剤です。
- 強い消炎解熱剤の石膏を15g含有しています。
- 熱を取る成分と潤いを与える成分が配合されています。
- 錠剤もあります。
黄連解毒湯
痒みと赤みでイライラ、乾燥はそれほど酷くなく、ややどす黒い発赤に使用します。
- 白虎加人参湯とならぶ漢方の代表的な消炎解熱剤です。
- 首・頭部の痒みによく効きます。
- 北里大学の有名な漢方専門の先生はアトピーに対して黄連解毒湯を第一選択としています。
- 首・頭部の痒みによく効きます。
- 痒みだけでなくイライラにも効果があります。
- 体を冷やす効果があります、少し苦いので水に溶いて冷やすと飲みやすくなります。
越婢加朮湯
赤みだけでなく浮腫みや浸出液が多い時に使用します。
- 熱と水分を取り除きます。
- 熱を持って浮腫みや浸出液の多いアトピーに使用します。
- 熱を下げる成分の石膏が8g配合されています。
- 麻黄が配合されており、皮膚の浮腫を取ります。
消風散
乾燥と湿った両方の症状を伴うアトピーに使用します。
- 乾燥した肌から、ジュクジュクした肌まで使えます
- 黄連解毒湯と並んで痒みを抑える作用が強いと言われいます。
- 夏場に痒みが酷くなるアトピーに良いとされています。
- 熱を下げる成分の石膏が5g入っています。
急性期後の漢方
急性期が過ぎ、熱感や赤みは収まったが乾燥と掻痒が残っている時に使用します。
温清飲
黄連解毒湯に四物湯が配合された漢方です。
- 黄連解毒湯で一段落ついた状態で使用します。
- 四物湯という潤いを補う成分が配合されています。
温経湯
手足がほてり、乾燥が強い皮膚の状態に使用します。
- 女性に使用することが多いです。
- 手足がほてり、口唇が乾燥している方に。
- 月経中に軟便になる方に。
発汗がお多い・発汗で悪化する
炎症がひどい時は白虎加人参湯・消風散を使用しますが日頃より発汗が多い方は黄耆が含まれる漢方薬を使用します、黄耆は代用的な補気剤で皮膚に栄養を与え、利尿作用があり、発汗を抑制します。
補中益気湯
元来は体が弱った時に使用する漢方薬ですが、免疫異常を調節する作用があり、アトピー性皮膚炎には免疫調節目的で使用します。
- 体がだるい、眠たい、力が入らない、寝汗が酷いなどの症状に使用します
- 柴胡と言う免疫を調整する成分が配合されています、体の免疫の異常を正します
- 長期間の使用でアトピーの悪化を減らし、ストロイドの使用量を減らすことが出来ます。
桂枝加黄耆湯
成分の桂枝と黄耆は『表虚』といい体の表面が機能低下した状態に使用する代表的な成分で、桂枝加黄耆湯はその双方を含有しています。
- 汗がよく出る、汗疹がよくできる方。
- 虚弱で汗を良くかく方に、体格の良い方には使用しません。
- 即効性はなく3ヶ月は内服が必要です。
体質改善薬
酷い炎症が一段落した後、アトピー性皮膚炎が起きにくい体質にします。柴胡清肝湯と荊芥連翹湯があります、いずれも黄連が配合されていて炎症を抑えます、両方共に多数の生薬が配合されており、一般的に配合薬の種類が多い漢方薬は効き具合にキレがなくじわじわ効いてきます。
ストレスが原因の場合
ストレスでアトピーが悪化することは珍しくありません、嫌な上司が来たらアトピーが悪化、仕事を辞めたらアトピーが治った等は珍しくありません。以下の様な漢方薬を使用します。
胃腸が弱い場合
甘いものを多く食べたり、腸の免疫バリアーが機能低下した場合アトピーが悪化すると言われています、胃腸が弱い方は以下の漢方薬を処方します。