以下の内容は院長の林が執筆しています。「文責:星の原クリニック院長 医学博士 林 俊」
円形性脱毛症の頻度
人口の1〜2%に起こると言われています。性別や年齢を問わず発症し、1/4は15歳以下で発症するため、子供から大人まで影響を受ける病気です。
円形性脱毛症の原因
円形脱毛症の原因は自己免疫反応です。免疫細胞(リンパ球)が誤って正常な毛根を攻撃すると考えられています。多くの場合、ストレスが原因ですが、なぜストレスでリンパ球が暴走するのかは解明されていません。
症状
境界がはっきりした円形〜楕円形の脱毛が単独、または複数出現します。痒み・赤み・痛みはなく、美容院や散髪の時に指摘されることが多いです。治療せずに悪化すれば、全頭脱毛症に広がることがあります。
一緒によくできる病気
円形性脱毛症は自己免疫の暴走により、他の自己免疫性疾患を合併することがよくあります。
- 甲状腺疾患(8%)
- 尋常性白斑(4%)
- SLE
- 関節リウマチ
- 糖尿病(1%)
円形性脱毛症に似た病気
- 【SLE / DLE】原因不明の炎症性の病気で、脱毛部に発赤・炎症があります。
- 【ケルスス禿瘡】カビが原因の脱毛で、円形性脱毛症のようにツルッとしていません。
- 【トリコチロマニア】患者自身が髪の毛を引き抜く症状で、学童の女児に多く見られます。
- 【禿髪性毛包炎】まれな型の瘢痕性脱毛症で、慢性的な深部毛包炎により広い範囲で頭髪が抜けます。毛髪が束になって残ることがあり、病因は不明です。
- 頭皮酒さ
- 【Pseudocyst of scalp】頭皮の皮下に偽嚢腫(液体が溜まった袋)があり、その上の頭髪が脱毛します。当院では一例を経験しています。
- 梅毒性脱毛
治療
リンパ球が暴走して毛根を攻撃しているため、【暴走したリンパ球】を除去する治療を行います。
外用薬
ステロイド軟膏は局所的に【暴走したリンパ球】を弱らせ、おとなしくさせます。
内服
【セファランチン】【グリチルリチン】が使用され、重症進行例では【ステロイドの内服】を行います。
紫外線治療・エキシマライト
紫外線・エキシマライトは皮膚のリンパ球を弱らせます。2020年4月より保険診療が可能となり、ステロイド軟膏と【紫外線・エキシマライト】の組み合わせで、多くの円形性脱毛症は治療可能です。3割負担で1回1000円、1週間に1〜2回の治療が理想です。